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墨出しとは?墨出し作業の目的や関連用語から作業内容までを紹介!

2023年09月27日

皆さんは、墨出しという言葉を聞いたことはありますか?
墨出しとは、建設業界で使われている言葉で、建設工事において大切な役割を担っている作業です。
また、墨出し作業にはさまざまな用語が用いられており、作業内容と共に覚えておく必要があります。

今回は、墨出し作業の目的や用語を整理し、どのような道具を使って墨出し作業を行うかまでを紹介します。

墨出しとは?墨出し作業の目的や関連用語から作業内容までを紹介!

墨出しとは?

墨出しとは、地面や必要資材に設計図で描かれた内容を描く作業です。
そのため、墨出し作業は建設物そのものを決定づける大切な作業だということができます。
本項では、建設工事における墨出し作業の目的と墨出しに関する用語を紹介します。

墨出しはどのような目的で行なわれるのか?

墨出し作業の目的は、設計図に示す建設物を造るにあたって、壁・柱・地面などの資材に中心線や仕上げ面の位置を描くことです。
また、墨出し作業はさまざまな工事が混在する現場において、建設物の位置や長さなどを共有する役割も担っています。
したがって、墨出しは工事における基本を作る作業であるため、建設物の品質にまで影響しうる大切な作業だと言えるでしょう。

墨出しに関連する5つの用語を紹介!

墨出しに関連する用語には、さまざまな言葉が存在します。
そこで本項では、墨出しに使われる主な用語を5つ紹介します。

1.親墨と子墨(小墨)

親墨とは、工事を進めるにあたって基準となる線を指しており、後述する芯墨や陸墨が親墨として扱われるケースが多くあります。
また、子墨(小墨)は親墨を基準として壁・柱・仕上げ面などを描く線を指します。

2.芯墨

芯墨は、柱やはりなどのさまざまな資材に中心線を描く作業を指します。

また芯墨は、それぞれの資材の芯墨をあわせて組み立てることで、より精度の高い建設を実現することが目的の1つです。

3.陸墨(水墨)

陸墨(水墨)は、天井やはりなどの高さを測る基準として描かれる線です。
そのため、各階の床や電気や水道などのインフラ設備における高さ調整の基準となる重要な線だと言えるでしょう。

4.逃げ墨

逃げ墨は、建設が進むと見えなくなると予想される親墨の情報を残すために描かれる線です。
例えば、柱の設置場所に墨出しを行なった場合、柱を建てると墨出しを行なった基準線が隠れてしまいます。

そこで、あらかじめ柱を建てる位置から、50cmや1mほどの一定の位置に墨出しを行うと柱の建設後も基準線が隠れることはありません。
上記のように、逃げ墨は建設工事において欠かせない手法の1つと言えます。

墨出し作業に必要な道具や作業方法を教えて!

前項では、墨出し作業の目的と墨出しに関連する用語を紹介しました。
では、墨出し作業は具体的にどのように行なわれるのでしょうか。
本項では、墨出し作業に必要な道具と作業手順を紹介します。

墨出し作業に必要な道具は?

墨出し作業には、線を引く道具から正確に位置や距離を測る道具までさまざまものが必要です。
以下の表では、墨出しに使われる主な道具の一覧を示します。

墨出しに使われる主な道具

名称 用途 使い方
墨つぼ 材料などに直線を引く
  1. 墨を詰める
  2. 墨糸を引き出す
  3. 線を引きたい箇所に墨糸を張る
  4. 墨糸を弾く
墨差し 短い線の墨出しを行なう 筆のような形状をしているので、字を書く要領で使う
セオドライト 角度の測定に使う
  1. 三脚を据え付ける
  2. セオドライトを設置する
  3. 整準および視準を調整する
  4. 角度を計測する
トータルステーション 角度と距離の測定に使う
  1. 三脚を据え付ける
  2. トータルステーションを設置する
  3. 整準および視準を調整する
  4. 角度および距離を計測する
オートレベル 高低差のある2点間の高さや地盤高を測定する
  1. 三脚を据え付ける
  2. オートレベルを設置する
  3. 整準および視準を調整する
  4. 測量を行なう
スケール・差金
  • 距離を計測する
  • 差金はL字の交点で直角も計測できる
2つの印や目標を決め、間の距離を計測する
下げ振り 地面に対する鉛直方向の正しさを確かめる 糸の先に付いた円錐状の重りを地面(床)に対して吊り下げる

このように、墨出しは精密機器からアナログな機器までさまざまな道具を使って、基準線を描いていくことがわかります。

墨出し作業の作業手順は?

墨出しの作業手順は、下の階から親墨を描いていき、上階に移していく作業が基本の流れです。
そのため、以下のような手順で工事が進んでいきます。

1.設計図を確認し現場に基点を記す
設計図には、それぞれ寸法の基準となる点(基点)の位置を記しています。
また、基点から見た寸法に公差が設けられているため、基点の位置を間違えると公差外れの原因になる可能性があります。
そのため、基点を描く際には特に注意が必要だと認識しておくと良いでしょう。

2.親墨を描く
基点を記したら、次に芯墨や陸墨を描いていきます。
また、工事が進むと隠れる線には、逃げ墨を用いると良いでしょう。

3.芯墨・陸墨を上の階に移す
上階の床を組み立てたら、次の階を造るために再び親墨を施工します。
上階の芯墨は、下階の逃げ墨に下げ振りを下ろし、それぞれの階における位置の基準を統一します。
また、上階の陸墨は下階の陸墨を基準として定められます。

4.3を繰り返し実施する

このように、墨出し作業は地上の基点を中心に、上階へと基準が受け継がれていくことがわかります。
したがって、手順1における設計図を用いた基点の施工が建設工事の肝とも言えるのではないでしょうか。

墨出しとは?墨出し作業の目的や関連用語から作業内容までを紹介!まとめ

今回は、墨出しを行なう目的から作業内容までを紹介しました。
墨出し作業は、建設物を建てる上で非常に重要な役割を担っていることがわかります。
本記事を参考に、墨出し作業を知って頂ければ幸いです。